Haring(オランダ語)・Herring(英語)ハーリングとは日本語でニシンのことです。
今年もハーリングの季節がやってきた!!と多くのオランダ人が解禁のその日を待ちわびていました。今年は6月15日が解禁日だったそうで、「もう食べた?」という質問をし合うのかどうかわかりませんが、町中あちこちにこのハーリングを売る売店が出現しています。そして、「あそこの売店はおいしい」とか、「ここで食べたのはおいしくなかった」 「あの店は油がくどかった」 「俺の一押しの店は・・・」などと話しています。
日本人としてもこのハーリングの解禁は、楽しみの一つです。オランダ人のように玉ねぎと一緒に食べるのも良し、わさび醤油、しょうが醤油で食べるのも良し、ハーリング丼にしてもごはんが進みます。
JSRでも毎年、外国語活動の一環としてオランダ語の学習をした後、実際に近くの商店街まで出向き、ハーリングを買って食べています。オランダでも日本人の魚好きはは知られているところで、JSR近くの商店街で毎年お店を出しているおじさんは、「この店は日本人学校の子どもたちが毎年食べにくるほどおいしいんだ!」と言っているとか・・・。
さてこのハーリングにかけるオランダ人の情熱は、日本人の桜にかける情熱と同じようなものでしょうか。ハーリング解禁日はニュースでも取り上げられ、オランダ人はみんなが知っている日とのこと。「今年の解禁日は?」なんてオランダ人に聞くと、「お前もハーリング好きなのか!?」と嬉しそうに言いながら、すぐにスマホなどで解禁日をチェックして教えてくれます。
この解禁日は毎年変わるようで、漁獲量を制限するものではなく、あくまでもハーリングをおいしくベストな状態で食べるためのもの。サイズと脂肪量に規定があり、ハーリングがそれ以上の数値になる頃に解禁となるようです。ですから、育ちが悪い年などは、ハーリングの解禁はない!のだそう。もちろん、成育の悪い年は全く食べられないという訳ではないようですが、臨時的なスタンド店は回転しないのかもしれません。
さて、このハーリング、昔はイギリスでもデンマークでもノルウェーでもたくさん食べられていたようですが、今はオランダがダントツ!
オランダにとってハーリングは歴史的にも大変重要な意味があり、後世に残すべき食文化の一つとなっているようです。
その昔、ハーリングは莫大なお金と技術革新をオランダにもたらしました。ハーリング漁のための造船や航海技術、ロープなどの繊維加工技術の向上、保存のための樽づくりが盛んになると木材加工や金属加工技術も高まっていったようです。
大航海時代にスペインやポルトガル、フランス、イギリスなどに一歩先を行かれていたオランダですが、このハーリング漁で培った船舶に関する技術や木材金属加工技術、縄、ロープなどの繊維産業の発展がその後のアジア地域への進出、つまり東インド会社の設立やインドネシアや日本との交易に寄与したと言えるのではないかと思われます。
そして何より、長期の航海で大きな問題となっていた船員の栄養失調やビタミンC不足による「壊血病」の発病がオランダの船に限って起こらなかったのは、ハーリングの塩漬けとその付け合わせのキャベツの酢漬け(ザワークラウト)を航海中の食料としていたからだとオランダ人は言います。
ハーリングはまさに、オランダに富と繁栄をもたらした魚であり、日本との400年を超える友好関係を築いた魚なのです。
さあ、ハーリングの季節は始まったばかりです。オランダ人に交じって、オランダ式食べ方でハーリングを思う存分楽しんでください(オランダ式食べ方については後日に)。
特に今年のハーリングは脂がのっていておいしいらしいですよ。