JSRの教育活動の出発点 その2

 前回の続きになります。行事に向けての取り組み方はもちろんですが、来る社会に向け、日々の授業や学校生活の中での取組、活動、学び方も、子ども達に付けたい力を確認しながら計画しています。

 小学校中学年の国語で学ぶ説明文風にしています。

Society5.0

 「Society5.0」という言葉、一度は耳にされたことがある方も多いかと思います。馴染みがあるかと言えば、「ない」と答える方が多いでしょう。

 「Society5.0」とは、日本政府が提唱する、目指す次世代の社会の仕組みや姿になります。また、2020年度より小学校で、2021年度より中学校で本格実施となった「新学習指導要領」の改訂にも大きな影響を与えています。

 この言葉には「5.0」という数字があります。「5.0」な訳ですから、「Society1.0」もある訳です。しかし、「Society1.0」や「Society2.0」といった言葉がもともとあったわけではありません。では、この「Society5.0」とはどういう意味で何を目指しているのでしょうか。そして、新しい社会がどのようなものか、私たちはどのような準備をしていけばよいのでしょうか。

 「Society5.0」とは、内閣府のホームページによると次のようになります。「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)を指す。」(一部抜粋)はっきり言って、分かるような、分からないような感じです。

 まずは、数字の部分を考えていきましょう。「5.0」とあるということは、「1.0」「2.0」がある訳であり、それが「5.0」まで続くわけです。同じく内閣府のホームページには次のように分けられています。

Society 1.0 狩猟社会

Society 2.0 農耕社会

Society 3.0 工業社会

Society 4.0 情報社会

 それぞれの社会変化には数千年から数百年の間がありましたが、その間隔は少しずつ短くなってきています。狩猟社会から農耕社会への変化には1万年以上もの時間経過がありますが、工業社会から情報社会の変化には200年ほどしか時間は経過していません。つまり、今のSociety4.0の情報社会からSociety5.0まではそれほどの時間はかからないことが考えられます。今後、急速な変化が予想されるということです。

 では、Society5.0「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)を指す。」社会とは、どのような社会なのか。具体的にはなかなか言い表せないというのが現実です。実際にどのような社会になるのか、予測不能です。今の私たちには考えもつかないような社会変革が訪れてくることでしょう。

 そのような中、近年よく言われているのが、近い将来、または、今の子どもたちが大人になった時、今存在する職業の何割かは存在しなくなるということです。具体的には銀行の融資担当者、レジ係、保険の審査担当者、ホテルの受付、データ入力者、機械機器のオペレータ等は、進化するAIによって、人間からAIにとって代わるということです。

 技術の発達、発展によって、今までにも消滅した、また、消滅しつつある職業はありました。多くの女の子たちのあこがれだったと言われていた「バスの車掌」は、もうはるか昔の職業です。また、ここ2~30年で大きくその役割を失ったと言えるのはタイピストです。このように、これまでの記述革新によって社会が大きく変化したように、今後、AIの台頭によって、私たちの未来は大きく、また、急速に変化しようとしているのです。

 

 このような劇的な変化が予想される「Society5.0」は、少しずつ、そして、確実に訪れています。今までの常識さえ通用しなくなるかもしれませんし、私たち大人が経験してきたことも十分に生かすことができないかもしれません。必要なのは、多様な人々の想像力と創造力になります。ですから、近い将来、今の子どもたちは、自分自身の力(想像力と創造力)でその変化に対応し、しっかりと社会を支えていかなければなりません。一人一人が自らの力で、それらの変化や課題に立ち向かい、様々な人たちと関わり合い、話し合い、意見を交流し合いながら、解決し、よりよく生きようとようとすること、その力を付けていくことが必要だと言えるのです。

p4c~哲学対話~ 中学部

p4cをご存じでしょうか。「philosophy for children(子供のための哲学)」 の略語です。

哲学というと難しく感じますが、哲学的思考を教育活動にも取り入れようと、ハワイから日本へ伝わってきた手法です。

今年度中学部では道徳の時間を中心に、このp4cによる対話を取り入れています。どのように行うかというと、

①みんなで考えてみたい問いを決める。

②考えたい問いについてみんなで円になって話し合い、考える。

③考えたことについて振り返る。

といシンプルなものです。

話すときにはルールがあります。Warm Heartにも通じていますね。

コミュニティーボールを使います(第1回目にみんなで毛糸を巻きながら作りました)。

JSRではロッテスタイル(イエナプラン+令和型日本教育)を取り入れています。イエナプランにもあるサークル対話と似ていますが、「自分たちで考えたい問いを決めて、自分たちで話し合う」ことがポイントです。生徒たちがもつ視点には、大人でも驚くものや鋭いものもあります。(押し付けられたものではない)自分たちで考えたい問いだからこそ、あれこれと意見を伝えて、相手の意見を聞いて、深く考えることができます。哲学そのものです。

中学部では道徳の時間に行っています。

先生たちもここでは一参加者です。大人なりの意見をもって参加します。だからこそ、生徒たちも「一般的に良いとされること」に囚われずに自由に意見を伝えます。

p4cでは考えを伝えることだけが大切ではありません。意見を伝えなくても、出た意見に耳を傾けてじっくり考えることも必要です。「話し・聞き・考える」

それでも、話し合いを深めていくために、WRAITECという7つの質問を使い分ける場面も出てきます。

•What/Mean?(意味)= それって何?

•Reason?(理由)    = なぜ?

•Assumption?(前提)= そもそも?

•Implication?(推測、連想)  = ~なのではないか?

•True?(真実)       = 本当なの?

•Example?(例示)      = 例えば?

•Counter-example(反例)= こんな場合は?

話し合いをしていくとテーマからはずれて思わぬ方向へ向かうこともありますが、それでも構いません。大事なのは、「参加者がじっくり考えることができたか」です。

今回のp4cでは風刺画をもとに一人一人が考えたい問いを複数作っていました。。

平等と公正どちらがいいの? スマホは悪いもの? スマホにどれほど支配されているの?

どこまで夢を追いかければいいの? ・・・などなど。

生徒の投票の結果、「どこまで夢を追いかければいいの?」を考えることになりました。

話し合いの中で、人との違いを明確に感じることがたくさんあります。相手の意見をまずは受け入れて自分の中で考えてみる。そして改めて考えたことをわかりやすく伝えてみる。そんな力が育つといいです。そして他者理解、異文化理解の中でWarm Heartを育んでいけたらと思います。

「夢はどこまで追いかければいいの?」 

p4cでは結論は出しません。皆さんはどうお考えになりますか。

ぜひ話題にしてみてください。

2023年6月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : minekawa

第四回 教職員からの推薦図書~中学部生徒へ~

 絵本って文字が少ないからこそ、一文字一文字、一文一文に注目できます。少ない情報だからこそ深く考えることができます。

 ヨシタケシンスケ氏の絵本は、子供も大人も楽しめます。絵を楽しんだり、ストーリーを楽しんだり、じっくり考えることができる絵本です。

そんな思いを生徒に伝え、本紹介が行われまた。

「もしもの世界」「りんごかもしれない」 著:ヨシタケシンスケ

2023年6月2日 | カテゴリー : 中学部 | 投稿者 : ijichi

教職員からの推薦図書~中学部生徒へ~

 5月からランチタイムを活用して、中学部を対象に教職員よる図書紹介を行っています。中学部生徒の読書の幅を広めることを目的としています。

第一回 「はじめての」 著:島村理生・辻村深月・宮部みゆき・森絵都

第二回 「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」 著:中川学

第三回 「宇宙で唯一の自分を大切にする方法」 著:山川亜希子

    「ワクワクしながら夢を叶える 宝地図活用術」 著:望月俊孝

以上の本が紹介されました。早速、推薦図書に挑戦している生徒もいます。読書の幅を広げ、さらに語彙力と表現力の向上につながることを期待しています。

2023年6月2日 | カテゴリー : 中学部 | 投稿者 : ijichi

「マース河」「彩」の全体練習が始まりました!

 今日から6月になりました。来週には、いよいよ在オランダ日本人合同運動会があります。
そこで小学部5年生以上は太鼓「マース河」、小学部1〜4年生は太鼓の音に合わせて「彩」を踊ります。今回は、太鼓と踊りを合わせて、体育館で全体練習を行いました。

 「大きな声を出そう」「姿勢をよくしよう」など、先輩を中心に声を掛け合って練習しました。本番まであと少し、素敵な演奏になるように、JSRのみんなが一丸となって頑張っています!

運動会の短距離走の練習!

 6月10日(土)の在オランダ合同運動会に向けて、各学年で体育の時間に練習を進めています。

 今日は小学5・6年生が、学校横の芝グラウンドで短距離走の練習をしました。5・6年生は100メートルのセパレートコースを走ります。まず始めに、軽くランニングで走ってみると、

「100メートルって意外に長いなぁ。」

「コーナーが難しいね。」

など、実際に走ってみて100メートルの感覚を確かめていました。

 「用意!どんっ!!」

実際にゴールテープを使って走ってみると、本番さながら気合を入れて100メートルを走り切りました。本番まで残りわずかですが、少しでも良い記録を出せるように、これからも競技の練習を続けていきます。

JSRの教育活動の出発点  その1

1年生では「じどうしゃくらべ」という説明文を勉強します。自動車の働きと作りがそれぞれ対応して説明されており、読み取るだけでなく教科書のような文体、構成、形式で書く学習もしていきます。

 中学年からは、「はじめ・中・終わり」の三段階となる文章が説明文では主になってきます。そして、最初の段落で、疑問文による読者への問いかけ(疑問)があります。「~なのでしょうか。」といった文章です。これは読者(読み手)への問いかけであり、この一文のおかげで筆者(物語文の場合は「作者」となります)の読み手に考えてほしいことや、この文章で伝えたいことがよく分かります。また、話題提示という形もあり、筆者の考えや疑問を読み取ることもあります。

 また、結論(考え)を先に書き出す文もあります。その後、その結論に至った理由や過程、説明が入り、最後にもう一度、結論が書かれます。

太鼓「マース河」練習  先輩から後輩へ継承される技術

 文章の構成だけでなく、事実のみが書かれている場合、筆者の意見が織り交ぜられている場合など、高学年に進むにつれ、より高度な内容になってきます。説明文に限らず、文章をより深く理解するために大切にしたいのは、文章を何度も読むことです。音読の宿題がよく出されるのがそのためです。しっかりと文章を理解するためには大切な宿題だと考えがあってのことです。

 国語は同じような学びを繰り返しながら、発達段階に応じて少しずつ高度な内容を勉強し積み上げていきます。スパイラル的な積み上げ方となります。繰り返し音読を毎日聞くのは、大変なことだと思いますが、ご家庭での学習が成長の大きな土台となりますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

 算数も繰り返しの学習ですが、国語のスパイラル型とは違い1年生の学習の上に2年生の学習を積み上げていくピラミット型とイメージしていただ蹴るのではないかと思います。ですから、学んだことをしっかりと理解し、活用できることが大切です。そのためにも毎日の宿題を含む練習は欠かせません。音読と併せて算数の方もしっかりと身に付けさせていきたいです。

小学部3年生 ブカレスト日本人学校との遠隔共同授業

 さて、小学校は2020年度から、中学校では2021年度から新学習指導要領での学習が始まりました。テレビ等で盛んに言われていましたので、今更説明する必要もないかと思います。しかし、現行の学習指導要領について、また、改定の背景にある社会情勢について知っていただくことが、JSRの目指している教育活動を理解していただく、応援していただくことにつながるかと思います。なぜなら本校独自の教育プログラム「ロッテスタイル」と大きくかかわってくるからです。

 今回の改訂で大きく変わった点はいくつかあります。具体的には5・6年生の外国語科や、3・4年生の外国語活動の新設などがその一例です。とはいえ、今までの学習内容が大きく変わったり、音読の宿題がなくなったりするようなことはありません。スマホが身近にあるからと言って辞書のひき方を勉強しなくなるという訳でもありませんし、漢字も練習します。九九もしっかりと覚えられるようにしていきます。説明文も物語文も分数や求積問題も学習しています。

 では、外国語新設以外に何が変わったのか、それは、新学習指導要領改訂にかかわる背景を理解していただくと読み取れるのではないかと思います。また同時に、本校の教育活動の特徴も理解していただくことに繋がっていくかと思います。

 そこで、次回、読み手への問いかけのある説明文(小学校中学年)風に、この背景について紹介したいと思います。

小学部1~4年「彩」  自分たちで教え、確認し合いながらの練習風景

比例さがし

 小学部5年生の算数では、比例の単元の学習を終えました。子どもたちが家の周りで探して作った比例レポートを発表し合い、今日の授業時間には、レポートに書かれていた内容を、実際に自分たちの目で確認しに行きました。

 道中、たくさんの比例を見つけました。子どもたちも、「戻ってくるまでに10個の比例関係を見つける!」と、めあてをもって活動に取り組めていました。例えば・・・

「花の数」と「花びらの数」が比例している。

「建物の窓の数」と「窓についている模様の三角形」が比例している。

教室で学んでいることを、実際の生活の中で再確認できました。

2023年5月24日 | カテゴリー : 小学部 | 投稿者 : sugiyama

中学部 道徳の時間より「聞き方・伝え方」

まず始めにA4紙とペンをご用意ください。

以下の指示通りに書いてみてください。

「四角を書いてください。その上に小さな〇と大きな〇を書いてください。」

「大きな〇の下と小さな〇の上をくっつけてください。」

「四角の左上らへんから大きな〇の左の横にくっつく線を書いてください。」

「四角の右上らへんから大きな〇の右の横にくっつく線を書いてください。」

「最初に書いた線と同じところから今度は大きな〇の真ん中を通る線を書いてください」

さてどんな絵(図)が描けたでしょうか。

写真と同じサイズ、形で書けたでしょうか。

「一方的に伝えた」ので正確に書けた人はまずいないでしょう。

生徒も四苦八苦しながら「伝えよう」としていました。

※最初は「一方的に伝えてみましょう」とルールを課しました。

この活動の根底には「伝えることの難しさ」があります。「伝えたい図形」を「伝えたい思い」とします。思いは相手には見えません。だからまずは言葉で自分の思いを伝えます。自分の「思い(図形)」を「正確に」相手に「伝える」ために言葉を選んで一生懸命に伝えようとします。

しかし、思いを伝えたい相手は自分の思っていることを「正確に」つかんでくれません。

これはコミュニケーションにおいてよく起こることですよね。

そして思いを汲んでくれないと、伝えている側もイライラして怒ったり、受け手側も相手が何を伝えようとしているのかがわからなくなり、ときに言い合いや喧嘩になったり、そして築き上げてきた関係が崩れてしまいます。

何が原因なのかをこの授業で考えました。言い換えると「どうしたら自分の思いが相手に伝わるのか」

生徒たちの考えでは

・「相手の立場になる」→相手は何がわかっているのか?なにが理解できていないのか?

・「(受け手側が)質問する」→「これでいい?」「こういうこと?」

・「伝えている側が)確認する」→「どこがわからない?」「少し見せて」

このやり取り自体がコミュニケーションの根幹であると思います。何かと効率よく済まそうとしてしまう世の中ですが、相手がいる場合、一方的に伝えるのではなく相手の立場を考えながら伝えたり、受け手側も相手の思いを「汲み取ろう」とコミュニケーションをとることの大切さを生徒たちは学んでいました。

2023年5月24日 | カテゴリー : 中学部 | 投稿者 : minekawa

5月23日 業間休み

 毎週火曜日は音楽の授業のため、5・6年生の業間休みが少し前倒しになります。

 お隣のNAISR(インターナショナルスクール)と時間を調整し、お互いの休み時間が一緒にならないようにしていますが、火曜日の5・6年生の業間休みは時間がかち合ってしまいます。

 そんな時は・・・

 今日はいい天気でしたのでNAISRの児童たちも大勢遊んでいましたし、お互いが違うボールを追うというもの危ないことなので、一緒にチームを作って遊んでいました。

 小さな交流ですが、このような交わりが毎日の生活の中でできるのもJSRならではです。

2023年5月24日 | カテゴリー : 小学部 | 投稿者 : moronaga